最近他にする事が沢山あったのでそんなに見てなかったんですが、それ以上に書いてないから溜まる溜まる。
そういや今東京でゴダールの『アワーミュージック』が上映されてて、29日から大阪でもやるようですが。うーむ、ゴダール2本くらいしか見たことないし、どうも好きじゃないにしろ気になるっちゃ気になる。11月の後半には大阪行く予定あるんで、そのついでに、と思ったんですが、調べたらそん時にゃもう終わってみたいだし。うむむ。まあ多分行かない。
 

  • ショーン・オブ・ザ・デッド』2004英 監督:エドガー・ライト ASIN:B0006GAWIS
    • 世界のゾンビ映画を網羅した『ゾンビ映画大事典』*1という素晴らしいまでに趣味的な本が存在するのですが、友人にも一人ゾンビ・ホラー映画のオーソリティーが居ます。まぁ趣味的な人間はどこにでも居るといういい見本です。で、そやつが面白いと言っていたので見てみたんですが、いやー、いいねぇ。バカで面白かった。
    • ゾンビ映画は『地底人アンダーテイカー』*2くらいしか見たことないので、ゾンビ映画のお約束つーもんがイマイチわかってないから笑いどころをいくつか逃したんじゃねぇか、などと一人臍を噛んだりしておりますが、そんでも充分楽しめます。オススメですよこれは。
    • 主人公ショーンが恋人にフられた!街にはゾンビが!まあ大変!てなあらすじです。わかりやすいですね。"a romantic comedy,with zombies"なんてバカな惹句もついてますが、このromanticは恋人にフられて、最後には復縁するところのことなんでしょうか。やー、いいなぁ。
    • イギリス映画なんで、エンタメと言ってもハリウッドのノリとはやっぱり違う感じ。なんせ主人公が普通に等身大のバカですからね。素敵。バカがバカなりにバカな頑張り方をする。素敵。映像もガイ・リッチーとかに近い、映像のリズムがはっきり強調されててそこらへんも見てて気持ちいい原因でしょうか。
    • とりあえず次は『ドーンオブザデッド』を見てみよう。
    • あ、あと死ぬ奴当てが一個も外れなかったのでとても基本に忠実で素敵だと思いました。

 

  • ソラリス』2003米 監督:スティーブン・ソダーバーグ ASIN:B000666RYG
    • えー、少し前に書いた『惑星ソラリス*3のリメイクです。あらすじはコチラを見てもらうとして、まぁ、元とリメイクを立て続けに見ると比較するなというのが無理な話ですよね、やはり比較してしまいます。
    • 基本的に舞台も筋立てもソダーバーグの短縮版という感じは否めません。ラスト近くのどんでん返しや、回想シーン等オリジナル要素も入れてるんですが、どんでん返しの方は"アッ"と言わせられるだけの要素しかないし、回想シーンに到っては説明過剰*4、というか「あえて語らなかった事による観客の想像力の飛躍」を殺す事になってるんじゃねぇか、と思います。腹芸の国ニホンに生まれたからそう感じるだけなのかもしれませんが、そこらへんがハリウッドの限界なんじゃないんでしょうかねぇ。例えばソラリスステーションに着いた直後に、「何かが起こっている」ことを血痕とかでわかりやすく提示してあります。しかし、そういう手法だと「何が起こっているかわからない不安」というのはうまく表現できても、「何かが起こっているのか、それとも起こっていないのかすらわからない不安」のような、違和感・不安定な感じは表現できないですね。そこらタルコフスキーは凄かったです。あとラスト。あのラストシーンは安直な気がしますが、でもまぁ、終わらせ方はトテモむずいと思うので、まぁあれはあれで仕方なかったのかなぁ。
    • ソダーバーグの格闘のあとは見られるのですが、やっぱり元ネタの評価が高いと非常にやりにくいだろうなぁ、というのをビシビシ感じます。なんというか、煮え切らないというか、どっちつかずというか。タルコフスキー版ほど哲学してしまってる訳でなし、かといってエンタメになってしまったわけでなし、非常に辛い位置に居るんじゃないかと。
    • 映像には大変こだわってて、タルコフスキー版の白昼の森のようなやわらかな"白と光"をメインにした映像作りに対し、ソダーバーグ版は硬質でメタリックな"青と闇"。交錯する直線と直線で区切られた空間で画面を構成しています。まぁ、ここらへんは好みではないものの、とてもがんばった感が。いやでもタルコフスキー版意識しすぎな気もします。
    • 他に印象に残ったのは女性の描かれ方でしょうか。時代的・お国柄的なものもあるんでしょうが、ソダーバーグ版の女性(のようなもの)は非常に自律的に行動します。まぁフェミニズムが当然となった昨今ではそれも当然なんでしょうし、その点まったく文句はないんですが、この映画の場合そうすると失われてしまうものもある、という事で。タルコフスキー版の女性(のようなもの)は、なんと言うか作り物のような印象で、そこに魂というものを感じさせにくいものでした。それは所謂封建的に抑圧された女性、というようなものではなくて、言わば抜け殻・人形(ヒトガタ)のような虚ろなものでした。しかし、その様に描かれていたからこそ「人間とは何か」というところまでタルコフスキーは踏み込めたんじゃないかと。個人的に男女区別なく、抜け殻の美しさ、というものに非常に惹かれるので、その点でもソダーバーグ版は残念。ソダーバーグの方は、正直言って最初、この女優のチョイスはないやろ、とか思ってたんですが、まぁ、見終わってみると納得できるようなチョイスではありました。いや、しかし関係ないけど女優の演技はどっちも下手いんですけどね。
    • まぁ沢山文句は言いましたが、ソダーバーグにはがんばったで賞を上げます。しかしこの映画撮り終った後にソダーバーグだかジョージ・クルーニーだかが「とてもいい映画だ、で、どうやってこれを売るんだい?」とか言ったらしいが、その通りで売れなくてもしゃあないわなぁ。

 

  • 『穴』1957日 監督:市川崑 ASIN:B00005HRE8
    • 飄々とした和製スリラー。スリラーなのに緊張感のないところが市川崑らしい。
    • 美人ライター北長子(京マチ子)が雑誌の企画で一ヶ月間失踪することになった。しかしソレを知った銀行から金を奪おうとしている従業員三人組に知られ、長子の替え玉まで用意されて利用される。何かおかしいことに感づいた長子は調査に乗り出すが。。。といったお話。いやまあ粗筋とかよりうさんくせぇ和製ジャズに俺ァメロメロですよ。古い映画なんで音が悪いのが難点ですが、それもまた味、なのか。
    • OPのクレジットが字だけなのに見事にモダンでカッコイイ。とても素敵。
    • まぁ、『続・酔いどれ医者』でもそうでしたが、思想を直に登場人物に喋らせるのはどうなのか。そこら辺青いというか、ひょっとして啓蒙主義のつもりなのかしらん。
    • 銀行員役の船越英二のうさんくさい男前っぷりといったらどうだ。

*1:ISBN:4896917111

*2:ASIN:B00005UDB1

*3:id:katanga:20051015

*4:他のハリウッド映画に比べたら説明不足の域だとは思います