生きていたとはお釈迦様でも知らぬ仏のアイムスキャットマン

アマゾンの出版社別・文庫別売上ランキングを見ていたら、ハヤカワ文庫でカート・ヴォネガットJr.が売れまくっている模様。『プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫SF)』も今月新版で出たしブームなのかしらん。と思って色々見てたら、どうやら爆笑問題の太田が『タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)』をベタ褒めしてプチブームが来たらしい。図書館で急に『タイタンの妖女』の貸出予約が殺到したとかなんとか。
SFは、あのスターウォーズみたいな宇宙を舞台に悪と正義がエンヤコラ、みたいな所謂スペースオペラというヤツが苦手なので余り読みません。ただ、「終末モノ」*1はカナリ好きでして、その繋がりでヴォネガットも一冊『猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)』を読んでおります。独特の、全体を細切れにして小さいシークエンスを繰り返す文体も自分にはしっくり来まして、非常に面白かった。長編終末モノのマイベストではないでしょうか。
ちなみに短編だと筒井康隆の「睡魔のいる夏」*2。これは本当に静かな静かな終末。春夏秋冬、様々な終末のシチュエーションがありますが、これは季節が夏。あの強い日差しがもたらす眩暈のような感情と覆い被さるように訪れる静かな終末という類稀なる叙情を余す所なく書ききった名作ですので是非読んでみてくださいな。
漫画だと藤子・F・不二雄の後味の悪い悪い「カンビュセスの籤」*3。タイトルからもわかるように、テーマの中心は、多くの人間社会がタブーとするカニバリズム。そこへ持ってきて悲惨な終末。しかも主人公の男にとってその「終末」は思いもかけず訪れたもので、そのラストの「ウェー・・・」感と言ったら無いです。これも女房を質に入れてでも読むべし。初鰹食ってる場合じゃないです。
映画で終末モノと言えばココは三本。まずはもう皆様お馴染み『猿の惑星 [DVD]』。さすがにコレは有名すぎるからネタバレに気ィ使わなくていいですよねぇ?厳密に終末を描いたものとは言えないかもしれませんが、終末後の世界を描いたものとしてかなりの秀作です。だって猿が人間を狩って奴隷みたいにしてるなんて、初見のインパクトは前代未聞ですよ*4
そして映画で次。これも俺にとってはお馴染み『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を・愛する・ようになったか [DVD]』。これは皆様にとってもお馴染みに是非していただきたい一本。座右の一本にして欲しい。何回もこのインドデヤンスで言うておりますが、ピーター・セラーズが一人三役!あぁ、垂涎!ピーター・セラーズのゴイスーさについては何回も言っているんで改めて繰り返しはしませんが、この映画は監督もあのスタンリー・キューブリック。核による終末を描いた映画なんですが、ブラックコメディとして世界最高の映画だと信じて疑いません。ネタバレはやめときますが、あのラストシーンの衝撃と爆笑といったらねぇですよ。「アカの豚どもは水道にフッ素を入れて俺のエッセンスを汚しているのだ」
もう一本は、筒井康隆が「睡魔のいる夏」を書くときに、こんな静かな終末を書きたい、と思って参考にしたらしい一本。グレゴリー・ペックエヴァ・ガードナー主演の『渚にて [DVD]』。これも核の終末モノなんですが、静かに静かに破滅に向かっていく隠された焦燥と、残酷な叙情。夏の日差し・静かな終末と、「睡魔のいる夏」にすごいヒントを与えたのが如実にわかる映画ですが、この映画もトテモ良いので是非。とまぁ、他にもショボい特撮でダメSF映画としてバカにされてるけど、個人的には超大好きな『世界が燃えつきる日 [VHS]』とか色々思いつくのはあるんですがね。
とまぁそんなこんなで、アマゾン眺めてたらヴォネガット読みたくなってきたので本屋さんで『プレイヤー・ピアノ』買ってきました。俺も思ったより世間に流されやすいようです。でも『タイタンの妖女』を速攻で読んじゃうと何故か負けな気がするので、『プレイヤー・ピアノ』と『ホーカス・ポーカス (ハヤカワ文庫 SF (1227))』あたりを読んでからタイタンに手ェ出そうと思う。ていうか未読本がまだ山のように残っているのですがね…
 

*1:そういうジャンルがあるかどうかは知らないので今でっち上げたんですが、まぁ文字通り終末を描いたモノ

*2:あるいは酒でいっぱいの海 (集英社文庫)』所収。『睡魔のいる夏―自選短篇集〈4〉ロマンチック篇 (徳間文庫)』こちらにも入ってます。つーかこちらの方が手に入れやすい。

*3:箱船はいっぱい: 藤子・F・不二雄[異色短編集] 3 (3) (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)』所収 もしくは『藤子・F・不二雄SF短編集3 俺と俺と俺 (SF短編PERFECT版 3)

*4:猿じゃないけど人間が奴隷モノでショッキングといえば『家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)』なんてのもありますが。