• 江分利満氏の優雅な生活』1963日 監督:岡本喜八
    • 一日一喜八、なんて言ってる場合じゃないです。素晴らしく面白い。傑作ですよ。コレにも岡本監督らしく「戦中派の主張」みたいなのが入っているんですが小林桂樹演じる一サラリーマン江分利満の恥・怒りの感情としてモノローグで表されてて戦争映画の中でダイレクトにやられるよりも好感はあるなぁ。というかこの映画は山口瞳のエッセイ?をそのまま映画化してしまったようで、ほとんどが江分利満のモノローグで構成されてたり、アニメーションの挿入やらストップモーションやら実験的な所が多分にあるんですけれど。それにしてもストップモーションの効果が抜群で実にモダン。アニメーションも絵柄があのトリス君*1っぽくてうおおお。モダンだー。
      • こういうモダンさってのは中学の頃に北杜夫のどくとるマンボウシリーズ読んでからずっと憧れなわけで、90年代終盤くらいから東京パノラママンボボーイズコモエスタ八重樫あたりに象徴されるようなモダニカブームみたいなのがちょっと来て最近でもソコソコ見かけるわけですけど、そういう地に足の着いてないトコじゃなくてこういう時代の空気全体がもうダサモダンっていうかそういうのは未だに憧れで、俺としても六曜*2とかに通ってしまったりしてたんですけど。
    • サントリーの冴えない宣伝課員で酒飲みの江分利満氏がウッカリ雑誌社から原稿を依頼されて、その内容を江分利満氏のモノローグを中心に展開されるスケッチのコメディ映画。高度成長期に入る男の悲哀をおかしく描いた日本らしいウェットな映画で、今の時代にはさっぱり共感できるモノではないはずなんですが、直木賞受賞するシークエンスなんてお恥ずかしながら久々に涙ぐんだりしてしまって。そもそも男は一家の主だの家族を守るだのそういう考えはあんま僕には合わないんですが(考え方が進歩的とかそういうのじゃなくて自分がダメ人間だから)、生きるカッコ悪さをひたすら描く人間劇、珍しくとても素敵だと思わされてしまって畜生。家族とか持ってみてぇなぁとか思ってしまったじゃないか。こうやって人は社会に馴致されていくのか?危ねぇ危ねぇ。
    • 小林桂樹山口瞳は似すぎ。
    • とりあえずコレは見てください。宿題な。
      • 『幻の湖』*3なんてDVD化してるヒマがあったら岡本喜八BOXとか出せよ東宝。まぁ幻の湖は幻の湖でちょっとhotなんですけど、見たらきっとまた後悔するだろうなっつーのはわかりきってますね。そういえば洋画とかだと『サボテンブラザーズ』までDVD化されてたし、洋画だと60年代の名作とかは結構DVD化されてんのに。日本映画ってやっぱ人気ないのか?DVD化してもペイしないのかしら?溝口健二すらDVD化されてないってどういうこっちゃ。山中貞雄は最近DVD化されたみたいですけど、元々残ってるフィルムが少ないしなぁ。ちゃんとDVDになってるのって黒澤明小津安二郎くらいのもんなんじゃないんだろうか。
  • 『キング・オブ・コメディ』1983米 監督:マーチン・スコセッシ ASIN:B00012T3Q4
    • コメディで成功する事を夢見るパプキン(ロバート・デ・ニーロ)は人気コメディアンのジェリー(ジェリー・ルイス)につきまとって成りあがろうとするも…という映画。なんと言うか序盤中盤が非常にタルいので見ててダレるんですね。まぁデ・ニーロはキチガイの役をやらせたらそりゃアレなんですけど、この映画でもストーカー的な無自覚なキチガイ。見ててウッゼえんですよこれが。
    • 底抜けシリーズで有名なジェリー・ルイスはさすがに上手い。
    • まぁアメリカのショーコメディアンみたいなのはドコが面白いのかさっぱりわからないので、この映画の面白さもかなり減してるのが残念ですけど。ラストはさすがに上手いんですけどね。途中で複線もあるのであのラストは一体現実なのかパプキンの妄想なのかどっちとも取れる考えオチ