本日は三本。なんかもう開き直って見れるときに見ておく精神で行こうかと。

  • 助太刀屋助六』2002日 監督:岡本喜八 ASIN:B00006AUY9
    • 日本の二大ウルトラじじい監督、岡本喜八。もう一人は言うまでもなく鈴木清順。彼らは本当にモダンでクール。いくら高齢化社会になろうと若者を凌駕するじじいが居る、と言うだけで少し安心できる。
    • 自らを「助太刀屋」と名乗る助六真田広之)。仇討ちの助太刀をしてして生計にして、軽やかに陽気にそれを楽しんでやっている、らしい。少し小金が溜まったので生まれ故郷の上州へ里帰りした助六はそこでも仇討ちの場面に出くわす。そこで仇討ちのカタキとなっていたのは…文句ナシの娯楽時代劇。ダメだ、粗筋を書くのってなんか照れる、何故だ。
    • さて、じじいとは思えない、ズバッ!と切るような力強くてダイレクトなカット。特別美しいわけではないけれど、わかりやすくて上手い構図。情緒的なのは似合わない、と自分でも思っているのだろうか。娯楽に徹する姿勢は潔くて心地よい。
    • そして仇討ちなんて重たい題材ながら、ちっとも重たくなっていないのも喜八節。その喜八節をココで大きく担ってるのが真田広之なんですが、正直この人をかなり見直しました。たそがれ清兵衛なんて感じの少しナルってる男前役しかできないと思ってたのに、根っから呆けたヤクザまがいの役なんてのを厭味もなく演じていて驚いた。普通一人芝居とかヤられたらムカついて白けるのに。しかし24歳の役って言うのは多少無理があるが目をつぶろうではないか。そのくらいの年でコレが出来る人が他に思い浮かばない。
    • あとカタキ打たれ役の仲代達矢がカッコ良すぎですよ。どれくらいカッコいいかと言うと『用心棒』の三船敏郎くらい。この存在感はタダゴトじゃねぇ、ってなもんです。あと天本英世が一瞬だけ出てて、やっぱヨボヨボで怪しくてカッコ良くてウヘラウヘラしました。あぁ、惜しい人を亡くした。合唱。僕ァ基本的に怪優ってやつが好きです。岡本喜八は男を描くのが本当に上手い。端役まで皆が魅力的に見えてしまいます。
    • さて、大絶賛の真田広之仲代達矢ですが、気に食わないのも当然居るわけで…実は岸部一徳。人気はあるんでしょうが、なんかもう脇役は一徳に任せて置けばいいや、みたいな雰囲気無いですか?実に安易だ。ちょっとおちゃらけて飄々としていい意味で気持ち悪い存在感の悪役やらせたらそりゃ天下一品だと思うんですが、見てるこっちとしては「またかよ」みたいな。もう一人は鈴木京香。日本映画ってとりあえず鈴木京香出しとけばいいやみたいな(以下略)。とまぁアレなんですが、それ以上にいくらなんでもおぼこ娘の役ァねぇだろう。タダでさえおばちゃんくさいのに。はしゃいでわざとらしい方言を喋るのは見ていて辛い。
    • 珍しく俳優中心に語りましたが、ヤハリそれだけ出演者が魅力的に動いてるんですよね。映像特典で竹中直人が「喜八組では俳優がリラックスして楽しんでやってる」と言ってましたが、まさにその通りでいい意味で肩の力が抜けていて、それが非常に見ていて楽というか、みんな魅力的に見えるんですね。
    • さて音楽ですが、山下洋輔です。和太鼓+フリージャズ。そしてそれが見事時代劇にマッチしているモダンさ!ううむ、素晴らしい。山下洋輔は『ジャズ大名』の時も音楽やったりチョロっと出演したりしてるんですが、岡本喜八には本当によく合います。そんでこの次の年に山下洋輔は和モノと組み合わせた「pacific crossing」出してるわけですが、おそらく和楽器とやってみようと思ったのはこの映画が端緒だったんじゃないか、とか。ちなみに今かけてたりします。
    • いやとにかくこの映画は何も考えずに見て面白い。ラストがちょっとアレで引っかかりましたが、娯楽としては正解なのかも。豪華絢爛な娯楽時代劇がリアリズムのせいで不可能になった今、この映画こそがお手本の一つになるんじゃないでしょうか。リアリズムなんてぶっ飛ばすくらいの力強い豪華絢爛大娯楽時代絵巻も見てみたいんですけどね。
    • そういやダメとの評判で『イースト・ミーツ・ウエスト』を見てなかったけど見たくなってきたな。
  • おいしい生活』2000米 監督:ウディ・アレン ASIN:B000066HMR
    • ウディ・アレンも耄碌したか。元こそ泥のアレンが貧乏生活脱出のために銀行を襲おうとするが、隠れ蓑でやったクッキー屋が大繁盛、一転お金持ちに。嫁さんはハイソのお仲間入りをしようとして勉強をはじめるも、アレンは嫌がって二人はすれ違い、最後にはまた財産を失って…ってな話。
    • 最初のアレンと嫁さんがアパートの屋上で話すシーンの嫁さんの辛辣さは非常によかったんで期待したんだけど。あの鬱陶しいダメなエセインテリをやらせたら天下一品のアレンもそれをやらないし。テーマはいつも通り愛。やはりアカデミー賞は毒だったんでしょうか。
    • とりあえず嫁役のトレイシー・ウルマンによって救われてるような映画でありましょう。銀行襲撃仲間は中々いい味を出してたからもうちょっと絡むとよかったのに、結局は夫婦の話になるんだもんなぁ。
  • 『まらそん侍』1956日 監督:森一生 ASIN:B00005GEJU
    • 勝新が『不知火檢校』でブレイクする前の作品。いやもう、白塗りのベタベタで健康的な言わばそれまでの王道スター系の役で、後の芸風を考えるとウヘヘ、とか思ってしまう。
    • 時は幕末、その小藩では恒例の「遠足の儀」が行われる中、ライバルの若侍(こっちの方が男前)とヒロインをめぐって恋のバトルありーの、泥棒が藩の家宝を狙いーの、「遠足の儀」ありーので盛りだくさんのコメディ。ちなみに「遠足の儀」ってのはタイトル通りマラソン。ちょんまげマラソン。いやいや、バカですねぇ。
    • もう内容については上の説明で語りつくした様なもんなんですが、泥棒役のトニー谷が怪演快演。その存在は完全に主役を食ってます。おこんばんは、あたしゃ仲買ざんすぅ。なんて具合で喋りまくる喋りまくる。
    • それはそれとしてヒロインがかわいくない。むしろ泥棒の姐御や、勝新に横恋慕する娘さんのほうが遥かに綺麗。昔の日本映画はこういう例ばっかりなんだがどうしてなんじゃろうか。
    • あと特筆すべきは次席家老のダメ息子役の大泉滉。こいつもマラソンするんですがその走り方はまるでキチガイ。これは見るだけで笑えるので一見の価値はアリです。やばいっすよ、マジで。