• 『最後の晩餐‐平和主義者の連続殺人』1995米 監督:ステイシー・タイトル ASIN:B00009AV6F
    • 数年前に友人の家のCATVだかスカパーだかで見たのだけれど、結構面白かったので中古DVDを見つけると同時に購入。した途端にコレもレンタル入荷しやがった苦い思い出のある一品。日本未公開のブラックコメディ。明らかに低予算だし監督の名前は聞いた事ないし、キャメロン・ディアスが出ていなかったらおそらく日本でDVD化されることもなかったであろう。しかし中々に秀作なんですよこれ。
    • 5人のリベラルでインテリ気取りの大学院生がホームシェアリングしている一軒屋に、極右の元軍人がやって来てはずみで殺してしまう。「じゃぁいっその事、危険思想の奴は食卓で毒殺しちまおうぜ」と次々に人をぶち殺していく映画。そのエスカレートっぷりは予想通りではあるけどナイス。最後の方は「ライ麦畑でつかまえて」を文学じゃないって言っただけで殺される始末。
    • 外部からの5人の人間関係や考えの相違等も途中で生まれてきて、ドラマとしても佳作。プチ知的階級プチハイソの生活がよく描けていると思う。この監督さんは無名だけど今何しているのだろうか。一発ヒットを当てれば世に出てきてもおかしくないとは思うのだけれど。
    • ただ5人の関係が3人のWASP*1、一人がユダヤ人、残り一人が黒人。最初に殺人をするのがユダヤ人で一番エスカレートするのが黒人、という所に現在のヤッピーの状況を象徴的に表してる気がするなぁ。
    • そして特筆すべきはキャスティング。デビュー二作目のキャメロン・ディアスや極右役のビル・パクストンもいいのだがなんと言っても、右派のオピニオンリーダーであるTVスター役のロン・パールマン。最高です。容貌魁偉、現代の怪人と言った趣のロン・パールマンは、まさに大衆を煽動するカリスマとして最高の配役。そして実際は現実をきちんと見据えたインテリである、という魅力たっぷりの役はパールマンしか最早考えられない。
    • というか俺がロン・パールマン好きなだけなんですけれどもね。
    • あと何故かエンディングテーマが少年ナイフで爆笑。
  • 猫の恩返し』2002日 監督:森田宏幸 ASIN:B00008WI78
    • なんか『千と千尋』からのノリで見てなかったジブリモノを見ることに。
    • 非常にわかりやすくストレートなファンタジー。猫を助けた女子中学生が猫の国に連れて行かれて猫の王子様と結婚させられそうになるので逃げる、と言ったお話。基本的にかわいらしくて退屈はしないのだが作りは甘い。脚本は非常に単純だし演出も特に眼を見張るようなモノでもない。と言うか逆に考えると、ファンタジーが好きで気の利いた中学生なら書けてしまいそうなストーリーで、きっちりそれなりのモノを作るジブリの手腕は流石としか言い様がない、とは思うが。
    • なんと言うかアレですね、ちょっと夢見がちでブンガクショウジョな中学生女子が非常に好みそう。ポプリとか作りそう。メインストリームから外れすぎない程度に外れて文系ヒネクレ青春を送った僕としては「あぁそういう痛い時期もあったなぁ」とか少し共感しつつも、恥ずかしい過去を思い出して今夜も布団に包まりつつ一人呻くのです。「あ゛ーーー!」
    • しかし、この甘ったるい設定と展開はどこかで見たなぁと思っていたら案の定原作が柊あおい。例の『耳をすませば』の方。コレを見たのは高校の終わりくらいの頃だったのですが、あのメレンゲのようにフワフワした恥ずかしい内容の挙句の果てに、ラストで太陽に向かって「結婚しようー!」とか叫ぶもんだから爆笑してしまいました。モチロン耳をすませばもきちんと面白かったんですが、それ以上に恥ずかしくて笑える作品であったという記憶があります。面白かったけど揶揄して笑うのには最適と言った感じの映画。でも耳をすませばは熱狂的なファンがいるからあんまいじるとマジギレされますね。
      • そう言えば例の「結婚しようー!」のシーンの丘にはモデルとなった場所があって、そこには「耳をすませばノート」っていうのが置いてあって素敵なカップルの皆様方が色々書き込んでるらしいですよ。チックショー!うらやましいなぁオイ!!!!
      • とか言って皮肉ってる時点でコッチの負けは明確なので凄く空しい。
    • まぁナンにせよ23でヒゲはやした野郎が一人で猫の恩返しなんて見てたら通報されても文句言えないな、と見ながら思った。
  • 天才悪魔フー・マンチュー』1980米 監督:ピアス・ハガード ASIN:B00005HCL4
    • 変装大好きピーター・セラーズの遺作。やはりこの映画でもフー・マンチューと引退した老刑事役の一人二役。セラーズはこの年54才でいささか早い死を迎えるわけですが、54才にしては見ていて痛々しいほどヨボヨボ。死因は知らないけど、既にクスリか病気にやられていたんだろうなぁ。
    • そしてこの映画でも相変わらず東洋大好きピーター・セラーズ。東洋的な、西洋人にとって「よくわからない」ものをよくわからないまま人の誤解と誇張を増幅する形で笑いに結びつけるのは最早お家芸。彼は偏見は面白いって言う事をきちんと理解して使っていたんだろうなぁ、と言うのがモロにわかります。そうなんですよ、偏見っていうのは面白いんです。タダ偏見って言う物は前面に押し出すと品性が疑われるので大抵の人は隠すのですが、セラーズはそれをドドンとウリにしてしまうところが大好きな所以の一つであります。
    • しかし冒頭でピンクパンサーシリーズでケイトー役の人が出てきて「おや、お前はどこかで見たことがある」というギャグ。笑えない、笑えないですよ。あぁ、セラーズも衰えたなぁ、と哀しくなりつつ見ていたんですが、やはり全編にわたって基本的に不調。所々ナイスなシーンはあるもののやはり不調。しかしラストでドカンとやってくれました。「お前に人類が想像できる最高の物を見せてやる」、と。それでアレかよ、爆笑。ネタを明かせないのが残念ではありますが、いやしかしもう遺作のラストにアレを持ってくるとは。「お前に〜〜」というセリフは死期を予感したセラーズの最後のギャグだったのかも、とか思うとかなり感慨深いのですが、最後にあぁいうバカをやってくれるからこそセラーズは偉大なのであるなぁ。
    • 少なくとも俺の中では。あちこちで神のようにもてはやされて文化人と堕してしまった松本人志なんかよりも、ピーター・セラーズの方が何倍も偉大なのでありますよ。そして、アカデミー賞をすっぽかしてクラリネットを吹くとか、力技で自分をカッコいいものにしてしまったウディ・アレンよりも。
      • アレンと松本とセラーズを同列に置いて語るって言うのは無茶な気もするのですが、まぁコメディアンという点において。ということです。ただ松本がコメディ映画撮ってもセラーズには敵わないし、シリアスな映画撮っても絶対にアレンには敵わないとは思います。それはコントや漫才をセラーズやアレンが松本に敵わないであろう、というのと同じ事。世の中には松本信者が多すぎる。